お前が言うな

姉、「えー、また塗装をするの?」
私、「良いじゃない、キレイになるんだから」
姉、「うちだけよ、家の建て替えをしないのは」
確かにそうだ。
ご近所さんは家を建て替えており、団地の中で私の家は古いほう。
母親、「仕方ないでしょ、お金が無いんだから」
私、「塗装をするお金はあるの?」
母親、「お金なんて、ないわよ」

「お金なんて、ないわよ」は母親の口癖。数日後、家の外壁塗装をすることが決まった。
姉、「何色で塗るの?」
母親、「同じ色で塗るに決まってるでしょ」
姉、「そういうものなの?」
母親、「そういうものなの」
家の外壁塗装に限ったことではなく、母親のメイクもずっと同じ。

姉、「塗料には色んな種類があるみたいだけど、うちは、どの塗料を使うの?」
母親、「そんなの知らないわよ。一番安いやつでやってとしか言ってないから」
姉、「前回塗装をした時は、どんな塗料を使ったの?」
母親、「うちは昔から貧乏だから、前回も一番安いやつでやってもらったはずよ」
姉、「業者さんは決まったの?」
母親、「まだ決めてない」
姉、「何処にするの?」
母親、「一番安い見積もりを出してくれる業者さんに頼むは」

数日後、家に来たのは外壁塗装専門の業者さん。
母親、「迷わず来れました?」
業者さん、「はい、前回の時も私が担当したので」
今回、外壁塗装をすることになった業者さんは、前回と同じだった。

母親、「塗料には何を使うのですか?」
業者さん、「〇〇になります」
母親、「〇〇が一番安く済むのですか?」
業者さん、「はい」
母親、「前回は塗料に何を使ったか分かりますか?」
業者さん、「前回も今回同樣〇〇です」
母親が言ってたように、私の家は昔から貧乏だった。

外壁塗装が始まると、私が食べるオヤツが豪華になった。
私が食べたオヤツは、業者さんにお出ししたもので、業者さんは手を付けなかった。
父親、「Aちゃん(私のこと)が食べたいのを分かっているから、業者さんは食べずに残してくれているんだよ」
これだけ聞くと、温かい話に聞こえるだろうが、この父親の稼ぎが良ければ、2度も外壁塗装はしないで済んだはず。